コンプライアンスとは

・近年のコンプライアンス事件を拾ってみると、コムスンなどの介護報酬の不正請求・雪印集団食中毒・牛肉偽装事件・三菱自動車のリコール隠し事件・不二家の期限切れ原材料使用製品出荷事件・保険業界の保険金不払い事件・ミートホープの虚偽原材料の使用製品の出荷事件・「白い恋人」賞味期限を改ざん事件・船場吉兆偽装表示事件 等々枚挙に暇がありません。

コンプライアンスとは、日本語ではしばしば法令順守と訳されますが、最近は法令順守だけでなく社会的規範や企業モラル・マナーを守ることまでを意味するようになっています。

・かつての日本社会では、法律は共同の規範というよりも自分に都合のいいように利用するものという意識がありました。いまなおそれは残っているようで、コンプライアンスがこれほど騒がれるようになっても、まだまだ企業の不祥事が減ることはありません。ロッキード事件で逮捕された企業のトップ達は個を捨てて会社の大義に殉じているという意識をもっていたようで、社会もそれを容認する風潮がありました。雪印の社員は「業績が低迷していたので利益を出すために違反と知りつつやった」と述べたと報道されています。しかし、「法律やモラルなど守っていて利益が出せるか」というような本音は時には巨大企業を吹き飛ばしてしまうほどの時限爆弾になることもあり、企業への単純な忠誠心はもはや美徳とみなされなくなりました。

・それでも、企業社会では、法令・モラル等の外部規範より内輪の規範を優先させる特性があります。利益追求の市場競争の中で、より有利な価格競争のために、不等価交換・不対等取引・情報不均衡取引・独占取引などなどが意識的に追求されているといっていいでしょう。資本主義社会では「一般の人々にとって『想定外』である事象をいち早く『想定内』にした人が儲ける」のであり、高い給料の社員を養うために、暴利や不当利得と思えるような報酬を求めて企業は市場に向かいます。サービス産業ほど、大企業ほど、その傾向が顕著です。

・コンプライアンスは今、企業存続という命題と厳しく拮抗しつつ、感情論に乗りながらその翼を確かに広げつつあります。