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上場株式の譲渡益課税


・平成20年度の税制改正で、個人投資家の上場株式等に関わる税制は、平成21年から変更になり、平成22年まで軽減措置があり、平成23年から新しい税制になります。
・そこで、上場株式等の譲渡益課税について、現行の税制を踏まえ、今後の改正についての主要な内容を確認しておきましょう。

(1)平成20年度の譲渡益課税
・平成20年までの上場株式等の譲渡益に係る税率は10%(所得税7%、住民税3%)で、①「源泉徴収あり」の特定口座では申告不要、②一般口座及び「源泉徴収なし」の特定口座では要申告です。
・なお、③譲渡損失の3年間繰越控除制度(平成21年以降も同様)、④上場株式等の取得費の特例「みなし取得費」(平成22年まで)は適用できます。

(2)平成21年、22年の譲渡益課税
・上場株式等の譲渡益に係る税率は、500万円以下の部分は10%、500万円超の部分は20%(所得税15%、住民税5%)となります。
・具体的には、課税対象となる譲渡益が(損益通算後及び繰越損失の控除後)が900万円だった場合、500万円までの部分に税率10%で税額50万円、残り400万円に税率20%で税額80万円、税額合計130万円になります。
・なお、特定口座・一般口座等のすべての年間譲渡損益の通算額500万円を超えた場合は、「源泉徴収あり」の特定口座での譲渡分も含めて申告しなければなりません。
・つまり、「源泉徴収あり」の特定口座では、譲渡益が500万円以下であれば10%の源泉徴収で申告不要です。しかし、すべての年間譲渡益が500万円超えると要申告となります。そこで、この場合の税額計算は、まず、500万円以下の部分に10%、500万円超の部分に20%の税率で計算した税額から、すでに特定口座で源泉徴収されている10%の税額を控除した金額を納付税額として計算するということです。

(3)平成23年の譲渡益課税
・上場株式等の譲渡益に係る税率は、20%となります。なお、「源泉徴収あり」の特定口座(源泉徴収税率20%)での譲渡分は、譲渡益金額にかかわらず申告不要を選択することができます。

・証券税制、今後も紆余曲折があります。平成21年度改正からも目が離せません。

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裁判員制度の日当は雑所得


・国税庁がいわゆる裁判員制度で支払われる日当について、所得税法上の「雑所得」にあたるということを最高裁判所からの照会で明らかにしました。

・裁判員制度は来年5月21日から実施されることになっています。

・それに伴い、来年分の「裁判員候補者名簿」はすでに作成されており、名簿登録者には「裁判員候補者名簿への記載のお知らせ」が11月28日に発送されています。

・この名簿はあくまでも裁判員「候補」の名簿ですから、登録されたからといって、裁判員になることが決まったということではありません。事件ごとに名簿登録者の中からクジ引きで当該事件の裁判員候補が選ばれ、さらに質問票への記載などの手続きを経た後に、実際の裁判員が選任されるのです。

・裁判員に選任された場合、日当が「一日一万円程度を上限に支払われる」ことになっています。また、事件ごとの候補者に選ばれ、裁判所に呼び出された場合も最高8千円の日当が支払われます。

・この日当の税務上の取り扱いについて、国税庁は最高裁判所から以下の照会を受け、「貴見のとおりで差し支えありません」と文書回答しています。
■裁判員等に対して支給される旅費等については、その合計額を雑所得に係る総収入金額に算入する。
■実際に負担した旅費及び宿泊料、その他裁判員等が出頭するのに直接要した費用の額の合計額については、旅費等に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入する。

・雑所得とは、他の所得区分に該当しない所得のことをいい、年金や恩給などの公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などがこれに該当します。

・雑所得については、給与所得など他の所得と合算した総合課税となりますが、年間の給与収入が2000万円以下の給与所得者の場合、雑所得が20万円以下であれば確定申告する必要はありません。

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遺産取得課税方式とは


・平成20年度の与党税制改正大綱において「新しい事業承継税制の制度化にあわせて、相続税の課税方式をいわゆる遺産取得課税方式に改めることを検討する」ことが明記されています。

・ここでいう「新しい事業承継税制」とは、同じく平成20年度の与党税制改正大綱に記載されている「自社株の相続税の納税猶予制度」のことです。この制度は、取引相場の無い自社株式(未公開株式)を事業後継者が相続した場合、一定の要件を満たせば、当該自社株式に係る相続税額の80%が猶予されるというものです。

・この制度は平成21年度税制改正での成立が予定されており、成立すれば平成20年10月に遡って適用されるようです。

・そして、同制度に合わせて検討されることになっているのが「遺産取得課税方式」という相続税の課税方式です。

・現在の課税方式は「法定相続分課税方式」と呼ばれるものです。簡単に言うと、遺産が法定通りに相続されたものとして相続税額を計算し、その税額を実際に相続した遺産額の比率で各相続人に配分するものです。

・たとえば、遺産5億円を事業後継者である長男が4億円、次男が1億円相続した場合(他に相続人がいない場合)を仮定すると、以下のような概算になります。

■長男、次男の課税標準額
 (遺産5億円-基礎控除額7千万円)×法定相続分1/2=2億1500万円

■相続税額の計算
課税標準額2億1500万円×税率40%-控除額1700万円=算出税額6900万円 算出税額(長男)6900万円+算出税額(次男)6900万円=相続税総額1億3800万円

■相続税額の配分
相続税総額1億3800万円×長男の相続分4億円/遺産5億円=長男の相続税額1億1040万円
相続税額1億3800万円×次男の相続分1億円/遺産5億円=次男の相続税額2760万円

※実際の相続税の計算ではさらにいくつかの控除等があります。

・一方、検討されている「遺産取得課税方式」とは、各相続人が実際に取得した遺産額(課税標準額)に税率を乗じて相続税額を計算する方式です。まだ、基礎控除額や税率などが明らかになっていませんので確かな計算はできませんが、上の例だとおおよそ以下のようになるのではないかと思われます。

■相続税額の計算 ※基礎控除と税率が現在と同様と仮定した場合
(長男の相続分4億円-基礎控除7千万円÷2)×税率50%-控除額4700万円 =長男の相続税額1億3550万円
(次男の相続分1億円-基礎控除7千万円÷2)×税率30%-控除額700万円 =次男の相続税額1250万円

・この計算例だと、長男と次男の合計相続税額は1億4800万円になり、現在の課税方式よりも税額が1千万円増えることになります

遺産取得課税方式が採用された場合、相続税額の計算は簡素化されそうですが、遺産の配分については、これまで以上の注意が必要になるかもしれません。

・なお、この例で前述の「自社株の相続税の納税猶予制度」を利用した場合、たとえば長男の相続分4億円のうち2億円が自社株だった場合は、その自社株に係る相続税の80%が猶予されます。税率50%だとすれば、おおよそ8000万円が長男の相続税から猶予されることになると思われます。

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住宅ローン「金利変動型」選択が増加


住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が「平成20年度 民間住宅ローン利用者の実態調査(第2回)」を取りまとめました。それによると、平成20年7月から平成20年10月の3ヶ月間に民間住宅ローンを利用した人のうち「金利変動型」を選んだ人が35.3%(前3ヶ月調査時は26.5%)に増えています。

・民間金融機関の住宅ローンには、「変動金利型」「全期間固定金利型」「固定期間固定金利型」という3つのタイプがあります。

「変動金利型」は随時(通常は半年ごと)に金利を見直すもので、全期間固定金利型はローン期間中の金利を借入れ時点で決めてしまうもの、固定期間固定金利型は一定期間は借入れ時に定めた金利が適用されますが、その後は変動金利となるものです。

・どの金利タイプが有利(総支払額が少ない)かは、一般的には金利の状況によって決まるといわれています。当然、金利が上昇している局面にあっては固定金利型の方がリスクが少なく、金利が低下している場合は変動金利型の方が期待度が大きくなると考えるのが普通です。

・ただ、そう単純な話でもありません。

「固定金利型」は将来の金利変動を予測して金利を決めるため、同時期に借入れをした変動金利型よりも金利が高い場合がほとんどです。金融機関自身のリスク軽減のためか各種手数料が高めに設定されているケースもあります。また、変動金利型には金利が上がりすぎた場合に備えて、いくつかのセーフティネット機能が用意されています。たとえば、金利が変動しても返済額は5年間変わらないとか、返済額の増加は1.25倍までに制限されているという仕組みです。(ただし、どちらの仕組みも金利差額が未払い利息としてローン残高に加算されますから、将来の返済計画への影響が大きくなる場合も考えられます)

・固定金利型のメリットは、年々の返済額が確定されていることにより、将来に渡る返済計画や生活設計が立てやすいということでしょう。もし、金融機関の予想を超えるような金利の上昇があった場合には、「固定金利型で良かった」というケースも出てきます。ただ、そのようなケースはあまり期待できませんし、もしあったとしても影響額はそれほど大きくはならないでしょう。

・逆に金利の変動が金融機関の予想通りか下回る場合は、金利変動型の方が有利(総支払額が少なくなる)になると考えられます。特に、現在のように景気の状況が今ひとつで将来金利の据え置き、低下が予測される状況においては、変動金利型の方が有利と考える人が多く、今回の調査で変動金利型の利用割合が増えているのはそのためでしょう。ローン開始時の金利が固定金利型よりも低いというのも魅力的です。ただ、もし金利が上がった場合は予定外の出費ということになりますし、前述の未払い利息の問題もあります。

・結局、自分の生活スタイルや将来設計に合わせて、金利タイプを選ぶのが賢い選択方法といえるでしょう。